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演題詳細

P-222:
Mortierella属菌に内生する細菌Mycoavidus spp.が宿主の胞子嚢形成に与える影響について
○高島 勇介1, 太田 寛行2, 成澤 才彦2 1東京農工大院・連合農学, 2茨城大・農
当研究グループは,ケカビ亜門菌類であるMortierella elongataより,内生細菌Mycoavidus cysteinexigensを分離し,さらにM. elongata以外のMortierella属菌においてもMycoavidus spp.が存在することを明らかにした。今までに,M. elongata FMR23-6において,M. cysteinexigens非保有株は,保有株と比較して気中菌糸が旺盛に伸長することが観察されていたが,Mycoavidus spp.が,宿主に与える影響については明確に示されていない。Mortierella属菌には,気中菌糸上に胞子嚢を形成する種があり,気中菌糸形成の有無は胞子嚢形成に影響を与えると考えられる。そこで,本研究ではMycoavidus spp.保有株および非保有株を観察,比較することでMycoavidus spp.による気中菌糸および胞子嚢形成に与える影響を調査した。Mycoavidus spp.保有Mortierella属菌10種18菌株を供試し,貧栄養なLCA培地における培養および培養寒天片を滅菌水に水没させることにより胞子嚢形成を誘導した。その結果,18菌株中13菌株より胞子嚢形成を確認した。次に胞子嚢形成が見られた13菌株に対して,単胞子嚢胞子分離により,それぞれ8~15の単胞子分離株を確立し,バクテリア16S rRNA遺伝子のユニバーサルプライマーを用いたPCRにより各単胞子分離株における内生細菌の有無を確認した。その結果,単胞子分離株を確立した13菌株すべてより,内生細菌のPCR増幅を確認した。一方,Mortierella minutissima YTM23および Mortierella parvispora YTM39において,それぞれ2および6単胞子分離株より内生細菌のPCR増幅はなかった。PCR増幅がなかった単胞子分離株は,バクテリア特異的プローブを用いてそれぞれ1株ずつ胞子嚢胞子のFISH観察を行ったが,胞子嚢胞子内に細菌が確認できなかった。次に,YTM23およびYTM39のMycoavidus spp.保有株および非保有株をLCA培地上で10日間培養し,気中菌糸および胞子嚢形成の有無を経時的に観察した。その結果,YTM23およびYTM39において,Mycoavidus spp.の有無による気中菌糸および胞子嚢形成への影響は見られなかった。これらの結果は,Mortierella属菌の胞子嚢胞子にMycoavidus spp.が移行し,Mycoavidus spp.が胞子嚢胞子を介して分散する可能性を示唆している。また,先行研究よりYTM39において,内生細菌保有株における接合胞子形成阻害が確認されている一方,内生細菌の有無に関わらず,気中菌糸および胞子嚢が形成されることが確認された。
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