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演題詳細

P-229:
ウキクサの葉状体と根に集積するフェノール分解菌の分離と比較
○大内 源樹1, 田中 靖浩1, 玉木 秀幸2, 新村 杏菜1, 米田 恭子2, 牧野 彩花2, 遠山 忠3, 鎌形 洋一2, 森川 正章4, 森 一博3 1山梨大・生命環境, 2産総研・生物プロセス, 3山梨大・工, 4北大院・環境
ウキクサは葉状体と根で構成される浮遊性の水生植物である。これまでに、ウキクサによる様々な有害化学物質の分解例が多数報告されており、その分解能はいずれも根に生息する微生物に由来するものであると考えられてきた。しかし、我々は、ウキクサの葉状体にも有害化学物質の分解に関与する微生物が生息し、それらは根に生息する分解菌とは種類が異なることを明らかにしてきた(環境微生物系学会合同大会2014要旨集p. 153)。このことは、ウキクサを有害化学物質分解菌の分離源とする場合に、根と葉状体の両方をターゲットとすることで、より多くの種類の分解菌が取得できる可能性を示唆するものである。そこで本研究では、環境試料を接種したウキクサを有害化学物質(モデル物質としてフェノールを使用)で馴化することで、葉状体と根に異なる当該物質分解菌が集積・分離培養されるかを調べることとした。無菌のウキクサを河川水にて1日間栽培後(河川水中の微生物群集の接種)、滅菌済みの水生植物栽培用培地に移し、50 ppmフェノール存在下で栽培(馴化)した。5日間のフェノール馴化を1バッチとして計3バッチ行い、各バッチにおける培地中のフェノール濃度を測定したところ、いずれのバッチにおいてもフェノールの分解が確認され、その分解能はバッチ数が増えるとともに向上した。各バッチ終了後のウキクサの葉状体と根からDTS(Tryptic soy brothを100倍希釈したもの)平板培地にて微生物を分離し、その中からフェノール脱水素酵素遺伝子(dmpN)の有無を指標にフェノール分解菌の検索を行った。その結果、葉状体から27株/96株(1バッチ;5株/32株、2バッチ;15株/32株、3バッチ;7株/32株)、根から25株/96株(1バッチ;7株/32株、2バッチ;8株/32株、3バッチ;3株/32株)の分解菌を得た。取得した分解菌株の系統分類を16S rRNA遺伝子配列に基づき行ったところ、12属に分類され、このうち5属(Leptothrix属、Rhodoferax属、Asticcacaulis属、Dechloromonas属、Pseudomonas属)が葉状体、3属(Acinetobacter属、Flavobacterium属、Flectobacillus属)が根に特異的であった。
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