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水生植物ウキクサからの難培養性細菌群Verrucomicrobia門細菌およびArmatimonadetes門細菌の分離培養
○戸澤 恵里奈1, 田中 靖浩1, 玉木 秀幸2, 新村 杏菜1, 米田 恭子2, 牧野 彩花2, 遠山 忠3, 鎌形 洋一2, 森川 正章4
1山梨大・生命環境, 2産総研・生物プロセス, 3山梨大・工, 4北大院・環境
これまでに我々はウキクサ亜科植物の葉状体と根から難培養性の細菌群として知られるVerrucomicrobia門細菌を高頻度で分離培養するとともに、これまでに既知菌種として3種しか報告されていないArmatimonadetes門細菌(以前はCandidate phylum OP10)を新たにウキクサの根から2株、アオウキクサの葉状体から1株を分離培養することに成功してきた。このことは、ウキクサ亜科植物が他の環境試料と比べ、上記2門に属する細菌の分離培養源として期待できることを示唆するものである。そこで本研究では、未知微生物資源開拓の観点から、ウキクサ亜科植物の葉状体および根をターゲットとしたVerrucomicrobia門細菌とArmatimonadetes門の網羅的な分離培養について検討することとした。微生物分離源として無菌のウキクサに環境試料(河川水)を接種し、一定期間(1バッチ5日間を計3バッチ;計15日間)栽培したものを用いた。葉状体および根由来の338株を対象とし、Verrucomicrobia門細菌またはArmatimonadetes門細菌に特異的なプライマーを用いたコロニーPCR法により、これら2つの門に属する菌株のスクリーニングを行ったところ、Verrucomicrobia門に属する菌株を7株、Armatimonadetes門細菌に属する菌株を1株取得できた。得られた菌株を16S rRNA遺伝子配列に基づく系統解析に供した結果、Verrucomicrobia門細菌に属する菌株はOpitutae綱、Spartobacteria綱、Verrucomicrobiae綱のいずれかに属し、これらの中には既知菌種(Xiphinematobacter rivesi)との相同性が82.8%と非常に新規性の高い菌株も含まれていた。一方、Armatimonadetes門細菌に属する菌株は既知種のFimbriimonas ginsengisoliと近縁ではあるものの(90.5%の相同性)、少なくとも属レベルで新規であることが明らかとなった。また、微生物分離に用いた各サンプルから抽出したDNAをターゲットとし、16S rRNAアンプリコン解析(NGS解析)を行ったところ、ウキクサは葉状体と根の両方にVerrucomicrobia門とArmatimonadetes門を集積する傾向にあることが示された。