ウイルスはヒトや家畜などの動物及び農作物への感染により、毎年大きな損害を与えるだけでなく、ラン藻や藻類などの微生物にも感染し、地球上のあらゆる生態系に対して多大なる影響を与えている。現在解読されている10,000以上のウイルスゲノムは、広く保存された遺伝子を持っておらず、驚くべき配列多様性を示す。ウイルスはこのように医学・薬学・農学・生態学分野での研究対象として重要であるばかりでなく、生命進化に対する重大な関与も指摘されている。近年では次世代配列解析技術の発達にともない、環境中から単離することなくウイルスゲノムを解読した報告が増加してきている。また、単離されたウイルスのゲノム配列解読コストも年々減少する傾向にある。しかし、ウイルスゲノムの配列多様性は非常に大きいため、新しく得られたウイルスゲノムに最もよく似た既知のウイルスを探索したり、配列類似性に基づく分類を行ったりすることは容易ではなく、時に多大なる労力を要する。そこで我々は、新規ウイルスゲノム分類のためのツール「ViPTree Server (仮)」を開発中である。ユーザーが得たゲノム配列をウェブサーバーにアップロードすることにより、ゲノム配列相同性に基づいて、そのウイルスを含んだゲノム系統樹が作成される。これによりユーザーはウイルス系統及び、類似するウイルスゲノムを知ることができる。また、類似するウイルスゲノムとの間の配列アラインメントやドットプロットによってどの部分が類似しているかを確認できる。これらの図はインタラクティブに調整可能であり、ベクター画像としてダウンロードできる。さらに、このツールはゲノム配列中の遺伝子予測を行い、それぞれに対して相同性の高い遺伝子の情報を提供する。このツールを活用することで、例えば、新規ウイルスゲノムの進化・機能解析や、複数のウイルスゲノムの比較を手軽に行うことが可能である。