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演題詳細

P-244:
Heterosigma akashiwo virus配列解析とPhycodnaviridae再定義
○植木 尚子 岡山大・植物研 shokoueki@okayama-u.ac.jp
近年、300 kbp~2Mbpという広範囲なサイズにわたる二本鎖DNAをゲノムとする大型二本鎖DNAウイルス(Giant dsDNA virus, 以下G-DNAV)が次々と単離・同定されている。G-DNAVは、300 kb~1.2 Mbと、ウイルスとしては巨大なdsDNAをゲノムとする。ゲノム上には数百のORFと共に、長い遺伝子間領域、複数のtRNAコード領域等、新奇な特徴が見られる。例えば、共生微生物カルソネラは、既知細胞性生物で最小サイズのゲノム- 約160 kb、ORF数182 -を持つことを考えると、G-DNAVは、ほとんど細胞生物並みの複雑さをもったウイルスと言える。私たちは、G-DNAVの一つであるHeterosigma akashiwo virus (HaV)のゲノム全長配列を解読し、解析を行った。G-DNAVに属するウイルスは非常に多様性に富むが、その一つのfamilyとして Phycodnaviridae が挙げられる。Phyco =藻類に感染するdsDNA ウイルスはこれまで Phycodnaviridae として分類されてきたものであり, 赤潮原因藻Heterosigma akashiwoに感染する HaV Phycodnaviridae とされてきた。一方で、近年同定された幾つかの藻類dsDNAウイルスには、それまでに Phycodnaviridae とされてきたものとは非常に異なる性質を持つものが多く、 Phycodnaviridae の再分類・再定義を促す声が上がっている。 HaV ゲノムの解析により、 HaV は、これまでのいわゆる「古典的な」 Phycodnaviridae とも、その後に単離・同定された他のウイルスファミリーとより似た Phycodnaviridae とも、保有する遺伝子の多くの相同性が低いウイルスであることが明らかになった。この結果は、 HaV が他の Phycodnaviridae メンバーとは独立したグループであることを示唆する。また、この解析を行う過程で HaV 以外の、他の Phycodnaviridae の分類についての知見を得た。ポスターでは、これらの詳細について発表する。
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