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演題詳細

P-245:
プラスミドを持つ宿主のfitness(適応度)を増加させる原因因子の同定
○片岡 大亮1, レー ティー タン トゥー1, 道羅 英夫2, 金原 和秀1, 新谷 政己1 1静大院・総合科技・工, 2静大・グリーン研 kataoka.taisuke.15@shizuoka.ac.jp
【目的】プラスミドは種々の微生物間を接合伝達により伝播可能な遺伝子の運び手であり,微生物の急速な進化・環境適応に寄与すると考えられている.分子生物学の必須のツールとして用いられている一方,薬剤耐性遺伝子を伝播する媒体として問題視されている.宿主はプラスミドを保持する事で様々な影響を受けるが,選択圧のかからない条件下では宿主のfitness(適応度)を低下させる場合が多い.我々は,IncP-1群に属するプラスミドpBP136を保持する,Pseudomonas putida mt-2株の派生株,KT2440株及びPpY101株の2株についてfitnessの変化を比較したところ,KT2440株では低下し,PpY101株では向上するという全く逆の現象を見出した.本現象は,この結果から,PpY101株にはプラスミドを持つ際にfitnessを向上させる原因因子が存在すると推定された.そこで本研究では,プラスミドと宿主の関係性を理解することを目的とし,各菌株を全ゲノム配列レベルで比較し,この違いをもたらす原因について,より詳細に調べることとした.
【方法】KT2440株とPpY101株の全DNAを抽出後,MiSeq(Illumina 社)にてショットガンゲノムシーケンスを実施し,各菌株のドラフトゲノムシーケンスを得た.得られた配列と,既にデータベースに登録されている参照配列(NCBI Accession no. NC_002947, Nelson et al., 2002, Environ. Microbiol. 4:799)との比較を,large-scale blast score ratio(LS-BSR)によって行い,各菌株間の遺伝子の有無とSimilarityについて調べた.PpY101株で欠落が認められた領域について,欠落させたKT2440株の欠損変異株を作出し,本欠損株を用いて, pBP136を保持する場合と保持しない場合についての競合試験を行った.
【結果と考察】2菌株のゲノム配列をLS-BSRによって比較し,PCRにより検証したところ,PpY101株は,KT2440株の推定外来遺伝子領域,GI-50 (genomic island-50) 領域の一部,約55 kbを相同組換えによって欠損していることが示唆された.そこで,KT2440株から当該領域を除いた欠損株を作出し,pBP136を伝達させて,プラスミド保持株と非保持株とで競合試験を行った.その結果,プラスミドを保持する欠損株では,もとのKT2440株に比べてfitnessの低下が解消されたことから,本領域にプラスミドの宿主のfitnessを低下させる因子が存在されることが示唆された.現在は,本欠損株が他のプラスミドをもつ場合についても調べている.
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