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演題詳細

P-247:
超好熱古細菌Pyrobaculum属に感染する新規ウイルス2種の分離
○望月 智弘1,2, 布浦 拓郎2, 吉田-高島 ゆかり2, 高木 善弘2, 高井 研1,2 1東工大・地球生命研(ELSI), 2JAMSTEC tomo.mochiviridae@elsi.jp
地球上には細胞性微生物の10倍以上のウイルスが存在していると言われている。我々のウイルス多様性に関する知識は、医学・農学系に関わる病原性真核ウイルスと、極一部の原核ウイルス(ファージ)が中心となっている。真核生物と真正細菌に感染するウイルスはこれまでに数千種以上分離されているのに対し、生物界第三のドメインと言われる古細菌(アーキア)に感染するウイルスは僅か100株ほどが分離されているに過ぎない。しかしながら古細菌ウイルスには、レモン型・ボトル型・バネ型など実に奇妙な形状を有するものをはじめ、同じ原核生物である真正細菌ウイルス(ファージ)と比較しても圧倒的な形状多様性を有し、独自のウイルス叢(virosphere)を構成していることが示されている。超好熱古細菌Pyrobaculum属は世界各地の陸上温泉から分離されているものの、これまで本属に感染するウイルスは、イエローストーン国立(YNP)(米)とイタリアから2種分離されているのみであった。本研究では、温泉試料より90℃で増殖するPyrobaculum sp.の超好熱古細菌、並びにそれに感染する球形とフィラメント状のウイルス2種を分離し、球形のものをPyrobaculum spherical virus 2 (PSV2)、フィラメント状のものをPyrobaculum filamentous virus 2 (PFV2)と命名した。球形のPSV2は約20 kbpの二本鎖DNAゲノムを有し、YNPから分離され同じくPyrobaculum sp.に感染するPSV (Globuloviridae科)の近縁種であった。フィラメント状のPFV2は約16 kbpの二本鎖DNAゲノムを有し、YNP環境サンプル由来の集積培養産物のメタゲノム解析から見いだされたHAV1と近縁種であった。HAV1は分離株としては得られておらず、本研究により得られたPFV2が初の分離株であり、本ウイルスはウイルス分類学上の新科に属することが明らかとなった。
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