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イプシロンプロテオバクテリアが産生する細胞外膜小胞の形態学的・遺伝学的特徴
細菌は恒常的に自身の細胞外に小型の膜小胞(outer membrane vesicle)を分泌する。細胞外膜小胞は、シグナル情報伝達などの細胞間コミュニケーションとしての機能だけでなく、遺伝情報物質の細胞間輸送にも関与しており、新たな遺伝子伝播因子としての可能性が注目されている。しかしながら、初期生命誕生の場と考えられている熱水生態系において、細胞外膜小胞の生態学的・進化学的機能に関する知見はほとんどない。そこで本研究では、熱水生態系を代表する生物モデルとして、多様なエネルギー代謝経路を持ち、ダイナミックな熱水環境に適応したイプシロンプロテオバクテリア綱の化学合成独立栄養細菌を用いて、細胞外膜小胞の形態学的観察および内包される遺伝情報の網羅的機能解析を行った。熱水活動域から採取した様々な試料から単離したイプシロンプロテオバクテリアのうち、既にゲノム配列が明らかとなっている6株の単離菌株を用いた。これらの培養液を孔径0.45μm のフィルターでろ過後、ろ液を超遠心により濃縮し、Optiprepを用いた密度勾配遠心により細胞外膜小胞画分を精製した。各画分をネガティブ染色後、電子顕微鏡下で観察し、細胞外膜小胞の産生能の有無および、産生能が認められた株について、細胞外膜小胞の形態学的特徴を調べた。その結果、産生量に違いがあるものの、いずれの株においても約20nm~100nmの細胞外膜小胞が観察された。また、Nitratiruptor sp. YY08-13およびYY08-26では、Thermococcusなどで見らえるNanotubeやNanopodと呼ばれる構造体に非常によく似た細胞外膜小胞を産生することが明らかとなった。現在、これらの細胞外膜小胞に内包される遺伝情報について解析を進めている。